雨のふらない場所、でかさかさの地べたで根を生やしている薔薇が枯れてしまう。だれか水をやりなよ。今にも命がかき消えそうな、そのかわいそうな花を、救ってやりなよ。今もその薔薇はからからに飢えている。水分だったらきっと全てを飲み干してしまう。もしもそれが、血でも、水をふくんでいるのならば、それが真っ赤なあたたかい血でもよかった。白く咲くはずの花びらが染まろうとも薔薇はほしがった。その薔薇は明確な意思を持っていて、ただそれを伝える術をもたなかった。

(ああ、どのような形でもいい。あたしを救ってください。これしきのみずもなにも与えられていないのです。くるしいのです。ああ、あたしを救って下さい。このままでは死んでしまいます! もしもこの哀れなあたしに慈悲をいただけるのならば、あたしはあなたのために生き、あなたのために死にましょう。おねがいです。血でも水でも何でもいい。口にさえできない液体でもかまわないからあたしに注いでください)






 ああ。
 どうせ願いは届かず、淋しく朽ちて枯れるならば、意思も祈りもなければよかったのに!