あなたが隣にいると息ができない。 わたしの代わりに息をするように、わたしが怒らなくてもいいように、泣かなくてもいいように、笑わなくてもいいように、あなたがわたしを守りつづけるのが、本当はずっと苦しかった。何もしなくていいと抱きしめる両腕の中はいつも居心地がわるく、わたしをとてもみじめにさせた。わたしはなんの価値も、なんの役にも立たない存在なのだと。 あなたに守られて、あなたに生かされながら、明日の朝、あなたがいないことを想像する。手をつないだままはなれられないでいるのに、どうか、いっそ、消えてしまえばいいのにと願っている。時には“死んでしまえばいいのに”とまで、リアルになってゆく時だってある。 それでも、きっと一人では立てなくなっただろうこの足で、逃げたくて逃げたくてたまらないのに、あなたの必死なやさしさ、垣間みえるつよい執着が、わたしを縛りつけてのがさない。 あなたはやさしさには、最初から酸素がなかった。 だけどあなたは相変わらずやさしいので、わたしは罪悪感をつのらせて、いつしか自分が消えてしまいたいと望みだす。そうするべきだ。そうなるべきだ。わたしはマインドコントロールにあやつられはじめる。放り出した憎しみをその中にあたためながら。そのつめたさに凍えはじめていることには気づかないふりをして。 それでも、あなたのやさしさに酸素が生まれない。 わたしは苦しさのあまりついに今日、いっそ殺してと、ささやいてしまうのだ。 ( だけどこんなちいさな声ではあなたには聞こえなかったろう ) ( こんなに憎めても、逃げたくても、わたしはあなたを傷つけることが、できない ) |